進行形は、本当に『進行』を意味しているの?
教育英語(普通なら”英語教育”とか、”学校の英語”と呼ぶべきなのでしょうが、それだと何かと角が立ちそうなので、私の個人的な呼び方の”教育英語”)で使われる用語には、もうちょっとなんとかならないの?と思うものが少なくないようです。
”過去形”と意味的には何の関わりにも無いのに”過去分詞形”
これに始まり
何も完了していないのに、”完了進行形”(例:HAVE been sleeping ず〜と寝ている)
現在形よりも、原形にingがついているのに現在分詞形(例:being)・・・・
それはそれは、具体例をあげると、これだけで何時間でも話が出来るくらいに、変な用語がありまして。
ちなみにこれらの、変な用語の多くは、UK(よく英国と私たちが呼んでいる国)で出版されている教育向けの文法書が、そもそも難ありなのですが・・・
これまた、ちなみに、UKを英国と呼ぶのが日本では通例なのでしょうが、UK=United Kingdom of Great Britan and Northern Irelandの呼称のどこにも、英=Englandとは見当たらないので、英国ではなく、UKとしています。
自分の国の名前を別の名前では呼ばれるのは、あまり気分が良くないとUKの人も思うでしょうから。名前を間違えらるのは、だれにとっても、あまり気分が良くない例を1つ。私の姓は、藤木なのですが、これが結構しばしば間違えられ、嫌な思いをしています。この前も、あるお店に注文して、こちらの住所氏名を電話で伝えていると、こんなこともありました。
店員さん:『ご氏名をいただけますか?』
私: 『藤木(フジキ)です』
店員さん:『鈴木(スズキ)さんですね』
私: 『いえいえ。藤木です』
店員さん:『ツヅキさん?』
私: 『いや、そうじゃなくてですね・・・』
店員さん:『フチキさん?』
私: 『・・・・・・』
心の中では:ツヅキ、フチキ、そんな名前あるか???
いったい、どんな漢字にするねん!!
店員さん:『スチキさん?』
私: 『藤の花の藤に、樹木の木です』
店員さん:『あっ、分かりました。藤木さんですね』
それで、けっきょく家に荷物が届くと、宛名は、藤<本>。
私: 『もう藤木でも藤本でも何でもええわ』
こんなバカ話は、ここいらにして今日の本題である”進行形”について思うところを少々。典型的な進行形の例文をあげてみます。
He is sleeping. 彼は、寝ている。
彼は、寝ているわけですから、基本的には動いていなません。ところが、どこにも動いていない、進んでいないのに、少し変わって皮肉な進行形を、さらに1つ。
You are being polite.
これは、教育英語なら、『君は、礼儀正しくしている』とでも訳すのでしょうが、おそらく、より適切な意味合いは、
『あんた、今日は、えらい遠慮しているな』
とかになるでしょうか。そうなると、遠慮して、正直に自分の考えとかを言わない、行動を行わないことになり、これまた、特にも何かが進んでいるわけでもないの進行形。
3度めの、”ちなみ”になりますが、”進行形”は、UKの教育的文法書にある”Progressive tense"の訳語で、progressive の pro=前、gress=進む、これから考えると、前に進んで行くのが、いわゆる進行形の意味合いになるのでしょうが、実際は、進行形は、進行を表していない場合が少なくありません。
もちろん、こう言うと、『お前、わけの分からいことをグダグタと言っとるねん。進行形は進行形。それが、昔からの伝統や!!』と誰かに怒鳴られそうですが。
そんなお怒りの言葉に加えて、よく教育英語では、こんな文法規則を目にします。
ー 状態動詞は、進行形にはならない ー
この規則を聞いた高校生は、素朴に
それって本当??
という質問を、私にしてくることがあります。ここで、その子と教育英語の今後の関わりを考えて、
『その規則通りだよ。状態動詞は、進行形になりません』
と、”嘘”をつくのが”教師”の仕事かもしれませんが、やはり嘘をつくわけにもいかないので、私の知る限りで答えて
『状態動詞も、いわゆる進行形になるよ』
と答えることになります。実際にシャーロック・ホームズで考えてみると
Dr. Watson lived at Baker Street with Holmes.
と言える反面、Dr. Watsonが、結婚しHolmsと別々に暮らすようになるまでの一時期のことを言うなら、状態動詞のLIVEを、いわゆる進行形にして、次のようにも言えます。
Dr. Watson was living at Baker Street with Holmes before he got married to Mary.
もっというなら、どこかのファーストフードの宣伝文句じゃありませんが、状態動詞のLOVEも
I'm loving it!(今、気に入っているねん!)
と、いわゆる進行形になります。この英語の例が、教育英語の規則に反していて間違っている、気に入らないと思う方は、某ファーストフード店の本社にお電話の上、『お前のところの英語の宣伝文句、間違っているぞ。お前のせいで、中高生や小学生の英語がダメになる。けしからん』と怒鳴ることになるのでしょうか。ちなみに、この某ファーストフード店の宣伝文句にたいして、あれは間違いだというトンチンカンが批判を、インターネット上で、見かけたことがあるのも事実です。
某ファーストフードの宣伝文句はこのあたりにして、そろそろお気づきでしょうか。いわゆる進行形の本来の意味合いを。
教育英語で言う進行形は、
”進行;何かが、前に進んで行く”ではなく、
ある時点での”継続”、
それも”期間の限定された、短い期間の継続”を表しています。
つまり、いわゆる進行形は、
BE + A-ingは、『しばらくの間だけ、Aしている』
そして、この意味合いが、展開して、場合によっては、
BE + A-ingは、『近いうちに、Aしようといる=近未来の予測・予定』
I am leaving. うち、出ていうこうとしているねん=近うちに出ていく予定
と、こんなことを書いているうちに、長年の疑問が1つ解けたような気がします。その長年の疑問とは、
なんで、そもそも、教育英語は、
『状態動詞が進行にならなない』なんていう嘘をつくんだろう?
そして、この疑問に対する答えは、もしかすると、進行形という不幸な用語の選択に原因があるのかもしれません。
進行形ということは、前に進む
⬇
前に進むということは、動作だから
LEAVEや、MOVEなどような
動作動詞だけ進行形になる。
⬇
状態動詞は、
状態を表していて、とくに動いていないので
前に進めるはずがない。
よって
LIKE(気に入っている)や、HEAR(聞こえる)のような
状態動詞は、進行形になれるわけがない。
でも、いわゆる進行形を、進行ではなく
”一時的な継続”を表すとすると、まったく見える景色が変わってきます。
”一時的な継続”ということは、
ある時点において、しばらくだけ続いていれば良いのですから
LEAVEやMOVEなどの動作であろうと
LIKEやHEARなどの状態であっても、
場面によっては、つまり
しばらくだけ続いていることを表したい場面なら
いわゆる進行形=実際は、一時的な継続を表す表現で使えても
何の不思議もなくなります。
よければ、一度、”I am hearing the voice”を、"(ダブルクォーテーション)付きで、Googleしてみてください。教育英語では、ダメなはずの状態動詞のHEARの、進行形、そうではなくて、一時的継続を表す表現が山のように見つかるはずですから。